世界の農業生産を支える革新的な技術開発に活用されるJAICI AutoTrans
JAICI AutoTrans ユーザーインタビュー
2024年5月掲載
クミアイ化学工業株式会社
研開企画部企画課 田澤 佳苗さん
研開企画部知財課 那須 美菜さん・平野 裕貴さん・伊藤 充範さん・中谷 昌央さん
国内トップクラスの農薬メーカーとして、国内はもとより海外の農業生産をも支えるクミアイ化学工業株式会社において、企画や知財業務に携わる研究開発本部 研開企画部の皆様に、事業内容や強み、そしてJAICI AutoTransを業務にどのように役立てているか伺いました。
農薬の開発で培った確かな研究開発力を土台に、農業現場から日々の暮らしまで幅広く質の向上を目指す
——クミアイ化学工業株式会社の沿革や事業概要について教えてください。
田澤さん:弊社は、殺虫剤・殺菌剤・除草剤などの農薬の製造・販売と有機中間体・アミン硬化剤などの化成品の製造・販売を事業内容としています。創業は、第二次大戦後の農業生産力の低下が大きな課題であった1949年に遡ります。1959年に国産農薬第1号となるイネ紋枯病防除剤「アソジン」を、1969年に最初の大型商品である水稲用除草剤「サターン」を次々と開発しました。その後、世界に向けた製品の開発にも着手し、2011年には弊社の屋台骨のひとつとなっている畑作・芝用の除草剤「アクシーブ(一般名:ピロキサスルホン)」の販売を開始しました。トウモロコシ、ダイズ、コムギ、サトウキビといった世界の主要作物の生産現場では、既存の除草剤に対して抵抗性を示す雑草種への対策が課題となっていました。アクシーブはこれら難防除の雑草種にも効果を示すことから、抵抗性対策剤としてオーストラリア、北米、中南米といった幅広い地域で販売シェアを誇る製品に成長しています。
その他にも、卓越した除草効果と水稲への高い安全性を両立した水稲用の除草剤「エフィーダ(一般名:フェンキノトリオン)」や、水稲の主な病害であるイネいもち病に高い防除効果を示す殺菌剤「ディザルタ(一般名:ジクロベンチアゾクス)」を開発しました。
伊藤さん:2017年にはイハラケミカル工業株式会社と経営統合し、新農薬の研究開発から製造販売までを一貫して手掛ける体制を整えました。また、農薬の研究開発で培った技術力を基盤として、化成品事業を新たな柱とすべく展開しています。具体的には、クロロトルエン・クロロキシレン系の化学品や、半導体などに利用される精密化学品、発泡スチロールの製造などに取り組んでいます。また、自社の研究開発部門で創製した新農薬の原体を自社で製造できる点は弊社の大きな特長で、この体制と積み重ねた有機合成技術を活かして、化成品の受託開発・受託製造にも力を入れています。
——研究開発体制や研究所の機能についてお聞かせください。
田澤さん:研究開発体制として、研究開発本部のもとに研開企画部と開発推進部を設け、研開企画部は新農薬や化成品の創製・企画、開発推進部は新農薬の開発や登録といった業務を主に担当しています。また、研究開発本部のもとに、化学研究所と生物科学研究所という2つの研究所を擁しています。2023年から新しく稼働を始めた化学研究所「Shimizu Innovation Park / ShIP」には、新規生理活性物質の構造探索と合成研究を行う創薬研究センター、新規生理活性物質の製剤化研究を行う製剤技術研究センター、製造プロセスの開発や化成品の研究開発を行うプロセス化学研究センターが集約されています。生物科学研究所には、農薬研究センターと生命・環境研究センターがあり、化学研究所で見出された新規化合物の農薬としての性能評価や標的以外の生物や環境への安全性に関する研究を行っています。
伊藤さん:研究者が活発に議論を重ねながら日々の業務にあたることで研究開発体制を支えています。さらに、近年の弊社新卒採用では8割以上が理系のバックグラウンドを持っています。営業や販売部門においても製品の正確な知識が必要とされるため、会社全体として研究開発のネットワークが活かされる風土が醸成されています。
発明が生まれる現場と世界の最新技術動向をリアルタイムでつなぐ知財業務
——知財課の業務について教えてください。
中谷さん:知財課は、発明が発掘される現場に近いところで業務にあたる必要がありますので、生物科学研究所と化学研究所のそれぞれに課員が配置されています。私が勤務する生物科学研究所では、主に生物や遺伝子に関する発明や、混合剤に関する発明を扱います。化学研究所では、新規農薬活性物質、製造プロセスや製剤化技術に関する発明を扱います。このほかにも、弊社全体の商標の出願管理や維持を生物科学研究所で行っています。
那須さん:知財課で実施する調査の対象やテーマは状況によって変わりますが、特許を出願する場合は、先行技術文献が存在するか新規性調査を行います。また、研究員からの依頼で、化合物や製法について、類似した特許や文献がないかを調査することもあります。調査ではまず、JAICIが扱っている検索サービスCAS SciFinder®やCAS STNext®などを用いて、類似した化合物に関する特許や文献を検索します。
——外国語の技術文献調査や特許業務では、どのような苦労がありますか。
那須さん:外国語の技術文献といえば、以前は英語の特許や文献が多かったのですが、最近では中国語の特許がかなり増加している印象があり、実際に、それらを調査することが増えています。中国語の特許の多くは、専門家を擁する外部のサービスに依頼して正確に翻訳してもらっていました。その翻訳をもとに、弊社がこれから出願しようとしている特許と類似しているかどうかを判断しますが、翻訳の工程にかなりの時間と費用がかかっていました。
特に弊社の製品「アクシーブ」に関連する中国語の特許が急増し、ひとつひとつ人手で翻訳してそれを読むには、リソースに限界があるという時期に来ていました。こうした状況もあり、大まかに内容を把握するだけで充分なケースでは、インターネット上で利用できる一般的な機械翻訳サービスを使ってみることもありました。しかし、化合物名がうまく翻訳されなかったり、改行の位置がおかしくなってしまったりと翻訳の精度はそれほど高くなく、困っていました。
また、特許関連の業務では、情報収集や書類作成の期限が厳密に定められていることが多くあります。できるだけ効率よく翻訳したいのですが、一般的な機械翻訳サービスには、情報漏えいのリスクがあります。例えば、特許の審査の過程で提出する応答書を外国語で作成する場面がありますが、こうした業務も、限られた時間の中で安全性に配慮したうえで効率よく進める必要性が生じていました。
増大する中国語の技術文献調査の需要にも正確かつ迅速に応える
——JAICI AutoTransを選んでいただいた理由をお聞かせください。
那須さん:いくつかの機械翻訳サービスを検討しましたが、その中でJAICI AutoTransを選んだ理由のひとつはやはり、情報漏えいのリスクがなく安心して使用できることです。また、化学に強いJAICIが提供するサービスであることも導入の決め手となりました。翻訳にかかる時間も短く、特に英語の翻訳が非常に速いです。内容を確認したいと思ったらいち早く確認できる点がよいです。
中谷さん:翻訳にかかる費用を大幅に削減できる点もあげられます。特許全文の翻訳を外部の専門サービスに依頼すると、その文字数に応じて費用がかさみますが、JAICI AutoTransは特許1報あたりの単価が定額であることが魅力的です。これまでの概ね1/10~1/20程度に費用を抑えることができています。
——JAICI AutoTransをどのように活用されていますか。
那須さん:非常に便利な機能がOCR変換機能です。文字部分が画像として保存されているPDF形式の文書をテキスト認識してDOCX形式に変換します。原文が中国語で書かれたものや、記号や図の部分では、若干精度が低い場合もあるのですが、それを差し引いても、テキスト形式で保存されていない古い資料を機械翻訳できるようになるので、機械翻訳の前処理として重宝しています。
よく利用する翻訳メニューはDocSpreadⅡ翻訳です。様々なファイル形式に対応しており、しかも、同一レイアウトで原文と訳文が得られます。弊社では、外国出願用に審査過程で作成した英語の応答書を保管する際は、日本語訳も一緒に保管しています。以前は応答書を一件ずつ機械翻訳したあとに、翻訳結果をWord文書へコピー&ペーストして、原文と体裁をそろえて作成していましたが、DocSpreadⅡ翻訳を使うと、原文と同じファイル形式で書式や体裁もそろった訳文ファイルが得られるので、時間の短縮につながっています。
那須さん:これまで中国語の特許の翻訳では、化合物の図が掲載されていない場合に内容の把握が大変だったのですが、JAICI AutoTransを導入してからは、正確な翻訳によって、図が掲載されていなくても内容を把握することが容易になりました。期待以上に効率がよくなっていると思います。
——JAICI AutoTransへのご意見があればお聞かせください。
中谷さん:対応言語が、ポルトガル語やスペイン語にも広がることを期待しています。農薬を軸にグローバル展開している弊社ですが、特に「アクシーブ」を販売している国として、ポルトガル語やスペイン語圏の中南米の国もあり、中国語だけでなく、ポルトガル語やスペイン語の特許や関連する技術資料を扱う機会も多くなっています。また、農薬に関係するような化合物名の翻訳精度、特に中国語からの翻訳精度が高まるよう、継続してバージョンアップがなされることを期待しています。
——いただいたご要望は今後の開発課題として検討したいと思います。本日は、貴重なお話をありがとうございました。
ユーザー紹介
クミアイ化学工業株式会社
本社
〒110-8782 東京都台東区池之端一丁目4番26号
クミアイ化学工業は、1959年の国産第一号農薬の提供以来、農薬の研究開発と普及を通して、国内外の農業の発展と食料の安定生産に貢献してきた。「いのちと自然を守り育てること」をメインテーマに掲げ、グループ企業とともに、農薬を中核として培った独自技術で豊かな暮らしを支え、自然と調和した社会を実現するため、飽くなき挑戦を続ける。
化学情報協会では、海外特許・文献の内容把握や、科学技術・医薬製薬分野の翻訳文書作成を効率化する機械翻訳サービスをご提供しています。JAICI AutoTrans は、海外特許・文献抄録・論文・技術文書などを日本語でスムーズかつ適切に内容把握したい皆さまに活用いただける、JAICI 独自の機械翻訳サービスです。