化学情報協会

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豊富なメニューと翻訳精度で外国特許調査の効率化に貢献するJAICI AutoTrans

JAICI AutoTrans ユーザーインタビュー

2023年2月掲載

株式会社レゾナック

知的財産部 インテリジェンスグループ
堀井正己さん・皆川春香さん・周婷婷さん

左から周さん、皆川さん、堀井さん

世界トップクラスの機能性化学メーカーを目指し、製造産業の川中から市場に近い川下まで幅広く支える株式会社レゾナックの皆様に、JAICI AutoTransを活用した外国語の特許情報を取り扱う知財業務について伺いました。  

高度な技術力に根差した新体制で、世界を変える社会づくりを目指す

——株式会社レゾナックの事業概要について教えてください。

皆川さん:弊社が機能性化学メーカーとして扱う製品は、半導体・電子材料、モビリティ、イノベーション材料、ケミカルに大きく分けられます。半導体材料やCMPスラリーなどの半導体回路研磨材料、モビリティとして自動車部品やリチウムイオン電池材料といった製品を、コア成長事業に位置付けています。

 また、樹脂材料、コーティング材料、セラミックスやアルミ機能部材など、さまざまな産業のイノベーションを支える素材開発に取り組んでいる一方で、石油化学製品、産業ガス・基礎化学品などの化学品や黒鉛電極など、さまざまな産業の起点・インフラとなる製品を提供しています。文字通り、幅広い事業と、製造産業の川中から市場に近い川下まで対応した事業を展開しています。

CMPスラリー

CMPスラリー

——幅広い事業を展開するに至った経緯など沿革を教えてください。

皆川さん:弊社の始まりは、1908年にヨードの販売を目的として設立された総房水産株式会社にさかのぼります。その後1926年に日本沃度株式会社が設立されたのをもって創業としています。1934年には、国産アルミニウムの工業化に成功しました。1939年に、日本沃度が改称した日本電気工業株式会社と、国産法による硫安製造に成功した昭和肥料株式会社とが合併して、昭和電工株式会社を設立しました。

 その後は、高度成長の風を受けて順調に事業を発展させ、次いで、時代の要請を受け省エネルギー型の製品への転換を図っています。さらに、垂直磁気記録方式のハードディスクの量産を開始するなど、高付加価値事業へも積極的に進出しています。

 近年は、半導体材料や自動車材料などの成長分野に強みを持つ日立化成株式会社を前身とする昭和電工マテリアルズ株式会社との経営統合を進め、世界トップクラスの機能性化学メーカー「レゾナック」としてさらなる成長を目指しています。

——現在、特に注力している分野や製品についてお聞かせください。

皆川さん:リモートワークや第5世代移動通信システム5G、そしてIoTの普及が進む今、特に注力しているのはデジタル社会の実現に貢献する分野です。具体的には、ハードディスクのメディアやSiCエピタキシャルウエハー、半導体工程材料などの開発に注力しています。また、複数の企業が参画するJOINT2(Jisso Open Innovation Network of Tops 2)というコンソーシアムを立ち上げ、次世代半導体実装に必要となる技術の開発などに取り組んでいます。

 広範な事業で成長を続けるためには、各分野における高度な技術力が鍵となります。また、社内の研究者が活発に議論できる機会や、挑戦が続けられる風土も成長を支えていると思います。

SiCエピタキシャルウエハー

SiCエピタキシャルウエハー

封止材

封止材

各技術分野における外国特許調査により、幅広い事業展開を支援する

——知的財産部の調査解析業務について教えてください。

堀井さん:知的財産部では、特許・学術文献の調査・解析、事業視点での戦略的な特許出願、出願管理、契約・渉外・商標対応、知財に関する各種企画業務など、様々な業務を行っています。このうち、特許・学術文献の調査では、基本的には研究開発者からの依頼という形で調査業務にあたっています。

 依頼が来た際には、まず、特許のクリアランス調査なのか新規参入のための動向調査なのか等の調査目的についてヒアリングをします。無機化学や有機化学といった技術分野によって担当者を固定することはなく、チームメンバ全員で臨機応変に対応しています。調査の対象は9割近くが特許公報や特許明細書で、学術文献は1割ほどです。特許に関連した資料として拒絶理由通知を調査することもあります。

——外国特許や文献の調査で工夫されている点や苦労されている点を教えてください。

堀井さん:外国語の資料はやはり、ニュアンスを読み取るなど内容の確認に時間がかかり苦労します。検索の段階でも、キーワードの選択にあたって工夫が必要です。日本語の単語に単純にターゲット言語の単語をあてさえすればいいのではなく、ニュアンスが合っているのかを確認しながらキーワードを選定するので時間を要します。

周さん:体制的な工夫として、中国市場の動向を注視する必要がある調査では、私など中国語を母語とするものが担当するようにしている点が挙げられます。また、他の担当者の調査業務で内容があまり複雑ではない場合は、その調査で使用する検索キーワードを、私が中国語に翻訳して提供することもあります。

皆川さん:調査結果を依頼者に報告する際の工夫として、件数があまりにも多い場合や、短時間で内容確認をしたい場合等に、外国特許を翻訳して結果を共有したりしています。

 例えば、IPランドスケープと呼ばれる知財情報を活用して経営戦略・事業戦略を策定する解析を実施することがあります。解析結果から、一部の集合の内容を素早く確認したいといった要望があった際には、事業部側へ、翻訳した日本語データを提供したりしています。

 こうした大まかな内容把握のためであれば、翻訳に多少の誤訳があってもそこまで気にならないのですが、クリアランス調査の結果を見る際などは、用語単位で内容をチェックする場面では誤訳があると致命的な問題となるので苦労しています。

化合物名の誤訳が激減、スクリーニングの効率がアップ

——機械翻訳サービスの導入の経緯を教えてください。

周さん:中国の特許を翻訳する需要が多くあったことから、翻訳サービスを探すことになりました。中国の特許は定期的に確認が必要なSDI(Selective Dissemination of Information)の件数が非常に多いです。これらに対する一次スクリーニングでは、一般的な機械翻訳でしばしば生じる誤訳や翻訳漏れがあったとしても許容できるものでした。

 しかし、詳細を丁寧に確認できるよう精度が高い翻訳サービスが欲しいという要望が研究者から多く寄せられていたので、特に翻訳精度は重要視してサービスを探しました。

——JAICI AutoTransを選んでいただいた理由やポイントをお聞かせください。

周さん:理由は3つあります。まず、ポイントとして重要と考えていた、翻訳精度です。導入に向けて、特に中国語で書かれた特許明細書を、いろいろな機械翻訳サービスで翻訳してその精度を比較しました。私が試した中ではJAICI AutoTransの精度が最も満足できるものでした。懸案であった化合物名の誤訳もおおむね解消できることがわかりました。

 2つ目の理由は、翻訳の対象データが多様なことです。Word文書だけでなく、ExcelやPDFファイルも対象になっていますので、状況や用途によって異なるニーズを満たせるものだと思いました。

 3つ目の理由は、セキュリティです。機密文書を翻訳する必要もありますので、専用データセンターで翻訳処理を行い原文・翻訳データの蓄積や他目的への流用の心配がないJAICI AutoTransを選びました。

——JAICI AutoTransの便利な点はどのようなところでしょうか。

周さん:豊富な翻訳メニューからデータに合ったものを選択できる点です。特に「PatSpread翻訳」(図1)では、特許番号のみで特許全文の翻訳ができます。レイアウトもそのまま保持されていて、原文と訳文を比較しながら見ることができますので、大変便利です。

図1 「PatSpread翻訳」翻訳例(特許原文+日本語訳 PDF ファイル)

図1 「PatSpread翻訳」翻訳例(特許原文+日本語訳 PDF ファイル)

皆川さん:私が翻訳することが多いのはPDF形式の資料なので、PDF形式に対応している「DocSpread II翻訳」をよく利用しています。研究者からこの特許がちょっと読みにくいといった要望が寄せられますが、そうした要望にきちんと応えられるサービスだと思います。

周さん:先ほどお話したとおり、中国特許の中日機械翻訳では、化合物の名称が誤訳されがちでしたが、そのほとんどはJAICI AutoTransのおかげで解消できました。また、「汎用ワークシート翻訳」(図2)を用いると、Excelで一覧としてまとめていた情報のうち、例えば抄録の列だけを指定して翻訳することができます。

 調査で収集した大量の情報を、日本語に翻訳された抄録を手がかりにスクリーニングできるようになり、スクリーニングの効率が格段によくなりました。

図2 「汎用ワークシート翻訳」翻訳例(抄録の中日・英日翻訳)

図2 「汎用ワークシート翻訳」翻訳例(抄録の中日・英日翻訳)

堀井さん:弊社では、抄録などが英語で出力されているExcelデータを用いて、テキストクラスタリング分析を行うことがあります。日本語が解析できるツールを使う場合は、「汎用ワークシート翻訳」の機能で日本語に翻訳した抄録に対して解析を行えば、最終的にマップなどの形式で視覚化したアウトプットが日本語になりわかりやすいですね。

図3 パテントマップ作成ソフトウェア(インパテック社「パテントマップEXZ」)での「汎用ワークシート翻訳」活用例

図3 パテントマップ作成ソフトウェア(インパテック社「パテントマップEXZ」)での「汎用ワークシート翻訳」活用例

——JAICI AutoTransを使ってみて気になった点があればお聞かせください。

皆川さん:「汎用ワークシート翻訳」を利用する際は、Excelのセル内文字数を仕様内に収めるデータ加工など、事前準備が必要になることがあります。また、翻訳利用ごとに翻訳エンジンを選択するなど、一部設定の仕方に迷いが生じることがあります。

 「PatSpread翻訳」は、特許番号の入力だけで簡単・便利に翻訳結果が得られるので、他メニューでも迷いなく、ファイルをアップロードするだけで使えるようになることに期待しています。例えば、翻訳発注時によく使う設定を保存できる等の機能があるといいと思います。また一部のユーザーからは、他システムに翻訳機能をアドインできるような仕組みが欲しいという声も寄せられています。

堀井さん:2022年後半にリリースされたOCR機能は試してみたいですね。あとは、比較的マイナーな言語での調査をどうするかという懸案があり、対応可能な言語のバリエーションがさらに広がることに期待しています。

——海外拠点との情報共有における活用や今後の展開についてお聞かせください。

周さん:株式会社レゾナックが誕生し、海外拠点での研究や特許出願もさらに増えると考えられます。海外拠点で活動する研究者からの発明アイデア・特許明細書の草稿などを日本で確認したいとき、JAICI AutoTransを活用できるのではと考えています。

 特許出願を現地で行うなど、海外拠点の活動が今後増えると予想していますので、これからますます翻訳サービスの活用が必須になるでしょう。

図4 株式会社レゾナック 海外拠点

図4 株式会社レゾナック 海外拠点

——知財業務の概要や、業務へのJAICI AutoTransの活用方法など、具体的で貴重なお話を伺うことができました。いただいたご要望は今後の開発課題として検討させていただきます。本日はありがとうございました。

ユーザー紹介

株式会社レゾナック

本社
〒105-8518 東京都港区芝大門1-13-9

電気化学に端を発したレゾナックグループは、石油化学、無機化学、金属材料へと発展してきた。現在はその技術で、情報通信産業・自動車産業に用いられる素材・部品や、生活に必要な各種の製品を擁し、先端材料パートナーとして時代が求める機能を創出し、グローバル社会の持続可能な発展に貢献することを目指す。

研究開発複合施設「共創の舞台」

研究開発複合施設「共創の舞台」

化学情報協会では、海外特許・文献の内容把握や、科学技術・医薬製薬分野の翻訳文書作成を効率化する機械翻訳サービスをご提供しています。JAICI AutoTrans は、海外特許・文献抄録・論文・技術文書などを日本語でスムーズかつ適切に内容把握したい皆さまに活用いただける、JAICI 独自の機械翻訳サービスです。