化学情報協会

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SciFinderⁿのユーザビリティーがエキスパートによる最先端の合成を効率的に支援

CAS SciFinderⁿ (サイファインダー・エヌ) ユーザーインタビュー

2020年11月掲載 

株式会社ペプチド研究所

製造部 響野 元さん
製造部 望月 雅允さん
製造部 山本 哲也さん

医薬品原薬や様々なペプチド、糖鎖の受託合成および製造販売を行っている株式会社ペプチド研究所の皆さんに、SciFinderファミリーの新製品であるSciFinderⁿを実際に使用したご感想を伺いました。

信頼性の高い製品を世の中に送り出すために

——まずは、ペプチド研究所の概要や、皆さんの業務内容について教えてください。

響野さん:弊社はもともと大学の先生方によって創業された、今でいうベンチャー企業です。各部門にそれぞれエキスパートがいて、皆で協力し合って製品を作っています。創業当初は、カタログでの商品提供を中心にペプチドなどの生命科学関連物質を取り扱っていましたが、やがて時代のニーズに合わせ、ペプチドや糖の受託合成も取り扱うようになりました。2006年からはGMPグレードの医薬品原末などの取り扱いも開始しています。
企業から大学まで、幅広い方々に弊社のサービスをご利用いただいておりますが、日本国内ではまだペプチドをメインに取り扱う会社が少ないということ、そして他ではできない合成を受託可能であるという部分が、弊社の強みとして挙げられるかと思います。
社内の雰囲気としても、合成や研究がとにかく好きといった技術者が多く揃う、アカデミックな気風が漂っています。

響野さん

望月さん:私は製造を担当していて、ペプチド合成の受託合成品を扱っています。お客様に提供する製品については、間違いのないものを間違いのない品質で世に送り出したい、というのが、私個人だけではなく会社全体としても、こだわりを持っているところです。

山本さん:私も製造部で、受託合成品を扱っているのですが、その中でも糖の合成を主に行っています。合成では、なんとなく目的物かなというレベルではなく、この構造ですと確実に言えるまで、NMRなども含めて解析をしっかり行って目的物が得られたことを確認してから納品することを徹底しています。

響野さん:誰かが悩んでいたら全体で考えるという社風で、皆で信頼性の高い製品を世の中に送り出していきたいという想いが非常に強いです。そのような雰囲気の中で、弊社はカスタム受託合成成功率99%の実績を得ることができています。

望月さん

望月さん:合成の方針などの希望は通りやすいですし、本人の裁量に任せる自由な社風だと思います。私も若いころには存分に好きな合成をさせてもらえました。複数の合成ルートで議論になった場合には、合成担当者が方針を決定します。このため、担当者自身のモチベーションにもつながり、結果的に効率もよくなっていると考えます。また、後進にも、予算も同等で間違いないものを作ってくれるのであれば、好きな方針で進めてよいと指導しています。

山本さん:私も有機合成が好きでこの会社に入り、自分の思ったように合成をさせてもらえるので良かったと思っています。要望された品を、純度はもちろん品質にもこだわって期限内にきちんと製造し、お届けすることに力を注いでいます。

望月さん:受注が重なると、こちらからお客さまにお伝えできる納期が長めになってしまうことも多く、心苦しく思っています。納期などのご希望があればご相談いただけたら対応します。ぜひお問い合わせください。

時代の最先端のテーマに貢献する製品の提供

——新型コロナウイルス感染症(COVID-19)向けの製品も携わられているとのことですが、皆さんはどのようなに製品開発を進めていらっしゃいますか?

山本さん:COVID-19関連では、研究用の試薬などを販売しています。今ではカタログに載せている製品も、無料で研究者にサンプル提供し、役に立つか試してもらうことから始めました。

SARS-CoV-2 メインプロテアーゼ活性測定試薬

SARS-CoV / SARS-CoV-2メインプロテアーゼのFRETを利用した消光性蛍光基質です。
本試薬は、プロテアーゼにより蛍光基と消光基間のGln-Ser配列を切断されることで、蛍光が増大します。
この蛍光を観測することにより、プロテアーゼ活性を測ることができます。
本試薬を利用することでプロテアーゼ阻害剤の探索研究を効率的に行うことができます。

SciFinderⁿによって検索の効率が飛躍的に向上

——ペプチド研究所の皆さんは、以前よりSciFinderをご利用になっていましたが、今回、SciFinderⁿを導入してみてのご感想はいかがですか?

響野さん:私は、弊社内でSciFinderⁿの管理をしています。SciFinderⁿはSciFinderに比べてユーザビリティーが高いため、ユーザーはSciFinderⁿを使い始めると、従来版SciFinderには戻らない者が多いです。

望月さん:私も山本も、以前からSciFinderの使用頻度が高かったため、早めにSciFinderⁿに慣れておこうと思い、SciFinderⁿの契約開始後すぐに使い始めました。正直なところ、SciFinderと大して変わらないだろうと思って使ってみましたが、SciFinderⁿは予想以上に便利でした。

——業務でSciFinderⁿをどのように活用されていますか?

望月さん:合成でこちらの想定外の結果になり困ったときに、原料、反応手法や文献を調べるというような使い方が主になります。

山本さん:私の場合は、例えば糖鎖の化合物に対して注文やお見積もりの依頼があった際に、どのように合成を進めていったらよいかを調べたい時に利用しています。

山本さん

——反応検索を利用いただくことが多いと伺いましたが、SciFinderⁿになり良くなった点はありますか?

山本さん:SciFinderではできなかった立体結合を認識した反応検索が、SciFinderⁿではできます。そのため糖のような立体が重要な物質も効率的に確認できるようになりました。
また、結果の絞り込みがしやすくなりました。従来のSciFinderではシステム制限によりできない絞り込みがありました。SciFinderⁿではシステム制限が撤廃されたため、どんな項目でも絞り込みができ、便利に思っています。
他には、反応の検索結果で合成手順(実験項情報)が確認できるレコードが増えたので、SciFinderⁿ内で作業を完結できることがとても多くなり便利になりました。

望月さん:固相合成反応は、液相反応と同一に扱うことが難しいのですが、SciFinderⁿでは反応条件(Reaction Notes)から固相反応に簡単に絞り込めるため大変助かっています。他にも、マルチタブで展開しながら検索結果を確認できるため、データを参照するのが楽になりました。

山本さん:SciFinderⁿで検索の効率が上がったのは間違いないです。同じ時間内で調べられる情報が増えたと感じています。過去に行った検索履歴が残るようになったのもいいです。しばらくたってからもう一度検索する際に、履歴を活用しています。また、履歴を加工して再検索できる点も便利だと思っています。

立体結合を認識した反応検索例

——文献検索については、いかがですか?

響野さん:文献検索結果の関連度順(Relevance)表示にとても助けられています。以前は被引用文献数順や発行年順で見ていましたが、それらよりも関連度順は優秀です。弊社ではカタログ製品を出す際に、該当物質のオリジナル文献や、どの時期に爆発的に該当物質が広がっていったかなど、該当物質の文献での発表経緯についても調べます。その際、被引用数や発行年という観点の並びでは気づきにくかった重要な文献を、関連度順では上位に表示してくれます。このため、見なければならないトータルの文献数はかなり減って効率が良くなりました。

JAICI:ありがとうございます。ご要望について承りました。開発元の CAS に報告いたします。今後も、SciFinderⁿを使ってお困りになった場合や、ご要望がある場合は、お手数をおかけしますがご連絡いただけますと幸いです。
本日は貴重なお話をありがとうございました。

ユーザー紹介

株式会社ペプチド研究所
所在地:大阪府茨木市
1963年に世界に先駆けてペプチド合成試薬を発売した財団法人蛋白質研究奨励会を前身に、1977年に設立。生命科学の発展に貢献するという理念のもと、さまざまな構造の糖やペプチドの受託合成を行っている。2006年にはGMP施設を備えた研究所を建設し、臨床研究用原薬として使用可能なペプチドの製造販売を開始した。

本棟、GMP棟写真(会社案内パンフレットより)

ペプチド研究所のマスコット“pepちゃん”