化学情報協会

CAS SciFinder Discovery Platform™

ポリマーだって合成文献検索

コラムでは、CAS SciFinder のユーザーの方を対象に、検索に関するお役立ち情報や、ちょっとした豆知識を提供します。今回はユーザーの皆様からご質問が多いポリマーの合成文献検索について解説します。

ポリヘキサメチレンテレフタレートの合成文献検索

ポリヘキサメチレンテレフタレートを Substance 検索すると画面になります。この結果から合成文献を検索するとき、あなたなら「Reactions」または「Reference」のどちらを選んでいますか?

 

構造図の下に表示される3種類のアイコンに注目すると、References は 479、Reactions は 14 と表示されています。

References アイコンをクリック=文献データベースの検索

References アイコンをクリックすると、文献データベースに移り、ポリヘキサメチレンテレフタレートについて言及されている文献の情報 (479 件) が得られます。

 

これは、合成文献だけでなく、物性や用途などポリヘキサメチレンテレフタレートに関するあらゆるテーマの文献をすべて含んだ件数です。合成文献に絞り込むなら、Filter の Substance Role で「Preparation」 を選び、126 件になります。

Reactions アイコンをクリック=反応データベースの検索

一方、最初の画面で Reactions アイコンを選んだ場合は、反応データベースに移ります。

 

そして、反応スキーム中のいずれかの段階にポリヘキサメチレンテレフタレートを含むあらゆる反応情報 (14件) が得られます。ポリヘキサメチレンテレフタレートを生成物に指定して絞り込むなら、Filter の Substance Role で「Product」 を選び、5 件になります。

 

ちなみに、この 5 件が前述の 126 件に含まれているかを確認したい場合は、左上の References ボタンを押して文献データベースの回答集合にすれば、Combine 機能で容易に確認できます。

CAS SciFinder を構成するデータベースを理解しよう

CAS SciFinder は、4 つのデータベース (文献、化学物質、反応情報、試薬カタログ) で形成されています。このことから、化学物質画面でReferences を選ぶと、文献データベース中でその化学物質の情報を探し、一方 Reactions アイコンを押すと、反応データベース中でその化学物質を探します。

 

このことは、別のコラムに詳しく記載しましたので Reaction Role vs. Reference Role をご覧ください。

 

Reference データベースと Reaction データベースの違い

  反応 (CAS Reaction) 文献 (CAS Reference)
概要 反応情報のデータベース 文献情報のデータベース
収録件数* 約 240 万件 (文献数)

約 6,520 万件 (文献数)

検索対象 反応スキーム中の全反応関与物質 文献情報
(Preparation などの Role が付与された物質)
検索対象の生成物、反応物
  • 有機化学物質
  • 有機金属物質
化学物質全般
(ポリマー、無機化合物、金属などあらゆるタイプの化合物の合成文献を検索できる。)
同一反応中の指定 ×
特長 収率、触媒、溶媒などの詳細な条件を検索できる
  • あらゆる種類の化合物の合成文献を検索できる
  • あらゆる分野の合成文献を検索できる

 

* 2024 年 11 月 29 日時点の件数です。

 

このように References と Reactions にはそれぞれ収録の特徴がありますので、ポリマーの合成文献を検索するなら一番最初のポリヘキサメチレンテレフタレートの画面で「References」を選ぶのがおすすめです。

 

しかし、だからといって Reactions を選んではいけないということではありません。ポリマーの重合反応や工業的反応は Reaction データベースには網羅的に収録されていませんが、回答として得られた文献は十分有用な合成文献情報です。

反応データベースの収録対象分野を知ろう

反応データベースに収録されている反応情報の出典である文献は、すべて文献データベースに収録されています。

そして、これらの文献の主題は 80 あり、次の5 つの分野に大別されます。

  • 生化学
  • 有機化学 
  • 高分子化学
  • 応用化学・化学工学
  • 物理化学・無機化学・分析化学

 

反応データベースに収録されている約 240 万件の文献をこの5つの大きな分野別に見てみましょう。

 

下表をご覧ください。このように有機化学分野の文献が約半数を占めていることからも、有機化合物の反応情報であれば、反応データベース (Reactions) が有効だと言えます。

 

  CAS Reaction に収録されている文献数* CAS References
(Preparation Role を持つ物質を含む文献数*)
生化学 17.8 万件 128.7 万件
有機化学 130.7 万件 236.5 万件
高分子化学 54.8 万件 164.1 万件
応用化学・化学工学 9.5 万件 214.6 万件
物理化学・無機化学・分析化学 27.2 万件 161.1 万件

 

* 2024 年 11 月 29 日時点の件数です。

 

一番右の列は合成文献検索の絞り込みに使うPreparation Role を含む各分野の文献の数です。高分子化学分野の文献に記載されるようなポリマーの重合反応であれば、References での合成文献検索が欠かせないことがわかりますね。

まとめ

いかがでしたでしょうか?「ポリマーは CAS SciFinder で合成文献検索ができない」と勘違いしていませんでしたか?

目的の化合物の種類によって、Reference 検索と Reaction 検索を使い分けて、合成文献を確実に入手してください。

  • ポリマーの合成文献は References 検索で Preparation Role を使う

  • 有機 (金属) 化合物の合成文献は、Reference 検索、Reaction 検索、どちらも有効

 

・ ・ ・ ・ ・ ・

 

この記事は CAS SciFinder の検索方法の提供ではありません。CAS SciFinder を使った情報検索の参考になるような収録データに関する情報や、ちょっとした関連知識を提供する記事です。CAS SciFinder の検索方法や操作については以下のページをご覧ください。

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掲載日 2024 年 11 月 29 日