知っトク!Polymer Class フィルター
コラムでは、CAS SciFinder のユーザーの方を対象に、検索に関するお役立ち情報や、ちょっとした豆知識を提供します。今回は 2024 年 7 月より新たに CAS SciFinder に加わった、Polymer Class フィルターについてご紹介します。
Polymer Class とは
CAS SciFiner には 2024 年 7 月時点で約 243 万件のポリマーが収録されています。
CAS では、ポリマーの種類を 「Polymer Class Terms (ポリマー分類用語)」 として定めていて、各ポリマーのレコードにもこの情報が含まれています。例えば、次のイソプレン-メチルメタクリレート共重合体のレコードの場合は、Polyacrylic と Polyolein の 2 つが Polymer Class にあたります。
つまり、Polymer Class はポリマーの種類。Polymer Class を使えば「ポリマーの種類」によるざっくりした集合を、簡単に作成できます。
Polymer Class はポリマーの種類
Polymer Class は「ポリマーの種類」と述べましたが、CAS は次のように説明しています。
Polymer Class (ポリマー分類用語) は、各ポリマーの構造をコンピュータ・アルゴリズムによって解析し、結合の種類に基づいて付与されるコードである。
Polymer Class のルール
Polymer Class は、次の1、2のルールに則っとり、CAS SciFinder のポリマーのレコードに自動的に追加されます。
主鎖に存在する結合による分類
ポリマーの主鎖 (backbone) となる構造中に元々、存在する結合による分類です。例えば、下図のように、モノマー中に -CO-NH- の結合があれば POLYAMIDE が付与されます。
重合反応によって生成する結合による分類
モノマーの構造中に元々、存在する結合 (下図の黄色の結合) ではなく、重合反応によって生成する(と推定し得る)結合による分類です。下図の青色の結合に注目してください。
例えば、水酸基 (OH) とカルボキシル基 (COOH) を含むモノマーの重合により、エステル結合ができる場合は、POLYESTER に加えて POLYESTER FORMED という Polymer Class が同時に付与されます。
このように Polymer Class ターム (ポリマー分類用語) は、構造に元から存在する結合だけでなく、重合反応によって「生成しうる結合に対しても付与される」という点がポイントです。
Polymer Class の一覧
Polymer Class (ポリマー分類用語) は 43 種類。
一部の Polymer Class には formed 付きの分類も存在しますが、formed 付きの用語は formed なしの検索結果に含まれるため、Polymer Class フィルターによる限定をする場合は、「formed なし」の用語を使うのがおすすめです。
Polymer Class (formed なし) |
Polymer Class (formed 付き) |
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AMINO RESIN CHLOROPOLYMER DOUBLE STRAND EPOXY RESIN FLUOROPOLYMER MANUAL COMPONENT MANUAL REGISTRATION PHENOLIC RESIN POLYACETYLENE POLYACRYLIC |
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POLYAMIC ACID POLYAMIDE POLYAMINE POLYANHYDRIDE POLYAZOMETHINE POLYBENZIMIDAZOLE POLYBENZOXAZOLE POLYCARBODIIMIDE POLYCARBONATE POLYCYANURATE POLYESTER POLYETHER POLYHYDRAZIDE POLYIMIDE POLYIONENE POLYISOCYANURATE POLYKETONE |
POLYAMIC ACID FORMED POLYAMIDE FORMED POLYAMINE FORMED POLYANHYDRIDE FORMED POLYAZOMETHINE FORMED POLYBENZIMIDAZOLE FORMED POLYBENZOXAZOLE FORMED POLYCARBODIIMIDE FORMED POLYCARBONATE FORMED POLYCYANURATE FORMED POLYESTER FORMED POLYETHER FORMED POLYHYDRAZIDE FORMED POLYIMIDE FORMED POLYIONENE FORMED POLYISOCYANURATE FORMED POLYKETONE FORMED |
POLYNUCLEOTIDE POLYOLEFIN POLYOTHER POLYOTHER ONLY |
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POLYPHENYL POLYPHOSPHAZENE POLYQUINOXALINE POLYSTYRENE |
POLYPHENYL FORMED POLYPHOSPHAZENE FORMED POLYQUINOXALINE FORMED
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POLYSULFIDE POLYSULFONAMIDE POLYSULFONE POLYTHIOESTER POLYTHIOETHER POLYUREA POLYURETHANE POLYVINYL |
POLYSULFIDE FORMED POLYSULFONAMIDE FORMED POLYSULFONE FORMED POLYTHIOESTER FORMED POLYTHIOETHER FORMED POLYUREA FORMED POLYURETHANE FORMED
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定義
Polymer Class の詳細な定義は、こちらをご覧ください。
Polymer Class Terms in the Registry File
POLYMER CLASS TERMS 和訳版 (1993 年 1 月)
Polymer Class ってどんな時に使えるの?
Polymer Class フィルターを使うべき場面は、ズバリ「ポリマーの種類による集合を作りたいとき」です。
- グアニジンをモノマーに使ったアミノ樹脂にどのようなものがあるのか知りたい
- イソフタル酸を含むポリアミドの製造に関する文献を探したい
グアニジンをモノマーに使ったアミノ樹脂の検索
- CAS SciFinder の Substances - Advanced 検索のボックスに Guanidine の CAS RN® を113-00-8 を入力し、プルダウンメニューから Component RN を選んで検索します。
グアニジンを1成分として含む多成分物質が回答になります。Polymer Class フィルターの Amino resin にチェックを付けると、アミノ樹脂の集合ができます。
まとめ
2024 年 7 月の強化により、Substances 検索結果画面で Polymer Class フィルターが利用できるようになりました。これにより、次のような使い分けができます。
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ポリマーの種類にもとづく集合を作りたいときは 「Polymer Class フィルター」
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「ポリマー」という大きな括りで集合を作りたいときは「Substances Class フィルターの Polymer」
では、Polymer Class についてまとめます。高分子分野の研究者の方は、次回 CAS SciFinder を使う時に、確認してみてください。
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Polymer Class は構造に元々存在する結合および重合によって生成する結合によって付与されるポリマーの分類
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Polymer Class フィルターを用いると、ポリマーの種類に基づいた絞り込み検索ができる
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掲載日 2024 年 7 月 17 日