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バナナの話

コラムでは、CAS SciFinder のユーザーの方を対象に、検索に関するお役立ち情報や、ちょっとした豆知識を提供します。本稿では CAS SciFinder で植物や動物について文献を検索する際のポイントについて、解説します。

バナナは「草」な件

皆さん、こんにちは!今日はバナナに関する興味深い事実に関するお話しです。

バナナはもともとアジアから始まり、その後世界中に広まりました。

 

皆さんは、バナナの成長し、実っている様子を見たことがありますか?

 

「あ、木にバナナがなってる!」

 

と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、実際にはそれは木 (木本) ではなく茎(偽茎)です。つまり、植物分類学的にはバナナは木ではなく「草」に分類される植物です。

植物や動物について文献検索するときのポイント

科学的にもバナナは面白い性質をいくつか持っています。

 

たとえば『バナナ320本食べると死ぬ』という都市伝説がありますが、これはバナナからは微量な放射線が出ていることから言われるようになったのではないかと推察されます。バナナの皮には、カリウム40という成分が多く含まれていて、これが微量な放射線の原因です。

 

カリウム40は、バナナだけじゃなくて、ワカメ、ニンジン、ジャガイモ、豚肉などの食物にも含まれていて、放射線 (β線とγ線)が放出されていることが知られています。(注1、注2)

一般名による検索

バナナには、日光や蛍光灯の放射線を浴びるとすぐに熟れてしまう、という性質もあります。

放射線は、太陽や蛍光灯から出ている光のようなもののこと。つまり、青いバナナでも明るい場所に置いておくと、すぐに食べごろになる、ということが分かります。

 

では、そのようにバナナが劣化する原因を CAS SciFinder で調べてみましょう。

 

ここでは、banana deterioration というキーワードを入力して文献検索を行いました。

特定の植物種、科についての研究を調べる場合以外は、一般名『banana』をキーワードにした検索を行うのがポイントです。

 

 

一覧表示のままでざっと回答を見ると、エチレンガス、温度 (高温)、物理的な原因、菌、ウイルスなど、さまざまなことがバナナの劣化原因になっていることが分かります。

 

このうちエチレンと呼ばれるガスは、バナナが放出しているガスです。つまり、バナナを他の果物と一緒に貯蔵するとその果物も早く熟れることがありますので、完熟気味の果物はバナナとは別のところに置くのがよさそうですね。

学名による検索

日本で普段よく見るバナナは、約9割がフィリピン産の「Giant Cavendish」という品種です。もちろん、世界中にはそれ以外にもさまざまな種類のバナナが存在しています。

 

個別の「種」について興味があって調べたい場合は「学名」を使って検索してください。これは植物だけじゃなく、動物でも同じです。

学名の調べ方

CAS SciFinder の Concept タームとして検索に使える学名を調べるには CAS Lexion を使うと便利です。下の画像のように Giant Cavendish と入力すると、相当する Concept が表示されます。

 

この結果により、もし学名を使う場合は Musa acminata (マレーヤマバショウ) でよいことがわかります。

 

Musa は、東南アジアを中心に約70種が分布する常緑多年草です。現在栽培されているバナナの多くは Musa acuminata と Musa balbisiana を改良した交雑種が普及しているようです。

 

バショウ科 (Musaceae) やショウガ目 (Zingiberales) のような Musa の上位の分類から調べることもできます。

 

バナナがバショウ科なのは納得できると思いますが、ウコン、カルダモン、ショウガ、ミョウガ、バナナが、すべて同じショウガ目に属しているのは意外ですね。

バナナはおやつに含まれるのか論争に終止符をうつ

学名から分かるように、バナナは植物分類学上では、草の実(草本性)と捉えられるため「野菜」と言えます。園芸学では、木の実(木本性)は果物(果樹)、草の実(草本性)は野菜、と分類しているため、バナナだけではなく、草本性のイチゴ、パイナップル、メロン、スイカはみんな野菜です。

 

しかし、流通や生活感覚をもとにした分類と、学問は異なることがあります。私たちの普段の食事では「食後のデザートとして食べるものが果物、副食は野菜」とされていますので、やはり『バナナはおやつに含まれる』と言えるでしょう。

まとめ

バナナは気候の変化に敏感で、育てるのが難しい場所もあります。また、貯蔵、輸送で軟化・劣化しやすい果実という側面もあります。このように、CAS SciFinder で、植物や動物に関する様々な課題について文献検索を行う場合は、次の検索方針を覚えておくと、効率よく検索できます。

  • 通常は一般名で検索

  • 個別の種に興味がある場合は学名で検索

参考文献と参考サイト

注1) 環境庁, 2015, ”目で見る放射能”, 環境庁ホームページ (2024年2月6日取得, https://www.env.go.jp/chemi/rhm/h29kisoshiryo/h29kiso-02-05-13.html)

 

注2) 森千鶴夫,  "極微量放射能分布計測",  応用物理 67巻6号 (1998) : 691-692

 

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この記事は CAS SciFinder の検索方法の提供ではありません。CAS SciFinder を使った情報検索の参考になるような収録データに関する情報や、ちょっとした関連知識を提供する記事です。CAS SciFinder の検索方法や操作については以下のページをご覧ください。

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掲載日 2024 年 2 月 6 日